「『自分と同じもの』を子に受け渡さないようにしようと思った」【吉川ひなの】子育てに思うこと
人と自分は違うことを前提で生きる
子育ての中で大事にしていることをひとつ挙げるなら、何か。そう聞くと、ひなのさんは少し考えてから、こう答えた。
「たぶん一番大事にしているのは、“人と自分は違う”ということを最初から認めることかもしれないです。誰かに何を言われようと、それはその人の意見だよって。ママはこう思う。でも、あなたはどう思う? と、必ず聞くようにしてきました。子どもだからって、ただ従わせるんじゃなくて、その子自身の意見を持てるようになってほしくて」
そのスタンスは、学校とのやり取りにも表れている。
「息子の学校って宿題がすごく多いんですよ。でも息子は『やりたくない』と言う。だから私は、『やりたくないなら、やらなくていいよ』と伝えているんです。もちろん“サボっていい”ということではなくて、なぜやりたくないのか、自分で先生に話してみなよって。『月曜から金曜まで学校に行って、帰ってきて、もう十分勉強しているのに、いつ遊ぶの?』『僕は、いつ子どもらしい時間を持てるの?』と、そういうことを話し合っていいんだよって」
息子さんはなかなか言えず、最終的にはひなのさんが先生にメールをした。返ってきたのは、「宿題の量は減らせないが、やった・やらないは成績に関係しない」という返答だった。
「それを息子に伝えたら、とても驚いていて。『え、そんなにやらなくていいの?』って。だから、やる・やらないよりも、“ちゃんと話し合える”ということが大事なんじゃないかなと思いました。もちろん、学校では先生が『やってほしい』と言っているから、そこはまだ交渉中なんですけど(笑)。最終的には『学校のルールですから』という落としどころになったんです」
そして、その話を聞いた長女が、ふとこんなことを言ったのだという。
「『でもコミュニティって、誰かが入ってきて変わっていくことがヘルシーなんじゃない?』と言っていて。『全部のルールに最初から賛成できる人しか入れないコミュニティなんて、おかしくない?』『人はみんな違うんだから、誰かが入ってきて変わることが自然なんじゃない?』って。その考え方がわたしもすごく好きだなと思って。わたしが伝えてきたことは、彼女の中でちゃんと培われているって、改めて感じられた嬉しい出来事でした」
ひなのさんにとって子育てとは、何かを“正しく育てる”ことではなく、その子自身が、自分の感情や感覚をキャッチできる人でいてくれることなのかもしれない。
「自分を大切にするということは、どれだけ自分のことを知っているかだと思うんです。自分のことが分からないと、なんとなく我慢してしまったり、なんとなくこちらのほうがいいかなと流されたりして、あとから違和感になるじゃないですか。本当は嫌だな、本当はここまで踏み込まれるのは嫌だな、それが瞬時に分かるだけでも、人間関係は全然違ってくると思う。だから子どもたちには、“自分はどう感じているのか”をちゃんと知っていてほしいなと思っています」
子どもに望むことがあるとすれば、何かになることよりも、幸せでいられることだ。
「どんな大企業の社長になろうと、スポーツ選手になろうと、ヒッピーになろうと、本人が幸せで満たされて生きていればそれでいいと思っているんです。自分にとっての幸せとは何なのか、自分はどういう状態だと心地よいのか。それが分かっている人になってくれたら、それで十分だなって」

otona MUSE 2026年6月号より
EDITOR
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