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「人さらいのように。無理やり仕事してもらいました」【西川美和監督・坂東龍汰さん】映画「わたしの知らない子どもたち」対談

――まずは監督からお聞きします。『わたしの知らない子どもたち』で坂東さんが演じた諸積京一郎は、中盤〜後半部で主人公・琴子に重要な影響を与える記者役ですが、この役に坂東さんをキャスティングした理由を。

 

西川 本編では櫻井海音さんが演じた琴子のお兄さん・律朗役(音楽一家の長男でバイオリンが得意な青年)のオーディションに坂東さんがいらっしゃったんですよ。プロフィールに「特技バイオリン」って書いてあったので、そうか、バイオリンが弾けるなら、と思ってお会いしたんですが……ものすごくお話がお上手だったんですよ。

 

――コミュ力?

 

西川 そうです。「この人のコミュニケーション能力は種類の違う感じがする」と感じてからは、見方が変わってしまいまして。それに、琴子の兄の役には、坂東さんは年齢的に少し落ち着きすぎているとも感じました。でも、坂東さんとの御縁はなんとか生かしたい、と思って、それなら記者役でどうか、と。

 

坂東 撮影が予定されていた時期、すでにドラマの撮影が入っていたんですけど、西川監督の作品なら絶対にチャレンジしたいと思っていて、ずっとマネージャーさんに言ってたんですよ。時間なんてね、なんとでもなりますから。作ればいいんです(笑)。

 

西川 最初から、その時期は難しいって話を伺っていたんですけど、そこをなんとか、とお願いしたんですよね。

 

――ちなみにバイオリンは?

 

坂東 いやじつは……残念ながら……うまくは弾けません(笑)。

 

西川 そうそう。オーディションでも「たいして弾けません」っておっしゃってましたよね(笑)。

 

坂東 「きらきら星」くらいはギリいけるかな、というくらいの腕前でして。最初はお兄さん役で通ってしまったら練習しないとダメだな、って思ってたんですが。

 

――ボウイングはできるんですよね?

 

坂東 それはできるんですけど、もう10年くらい触ってないんです。

 

――(笑)。メンタル強いですね。というか、この調子でお話されたら、たしかにコミュ力に注目します。

 

西川 オーディションでも雑談が長かったですね。学校のとき、どんなふうに演技のメソッドを勉強したのか、とか。そういう話を聞かせてもらうのがすごく楽しかったんですよ。初めて会った人と、リラックスして、普通の会話を楽しくできるなら、子ども相手に取材する記者の役がぴったりだと思ったんです。

――たしかにぴったり。全体を通してものすごく重いエピソードが連なるなか、記者とのやりとりはちょっとしたオアシスになってますよね。坂東さんは記者役としてオファーされ、脚本を読んだときどう感じました?

 

坂東 戦争体験の話は祖母から聞いていたので、他人事じゃないと思っていたんです。幼少期の祖母は広島に住んでいたんですが、空襲のときに防空壕に逃げた話とか、原爆が落ちたとき瀬戸内海の島からきのこ雲を見た話とか。

 

――ちょ、ちょっと、この話、長くなりそうなので、あとに回しましょう。

 

坂東 そういう話を祖母から聞いていたとき、子どもながらに僕もそこにいるような気持ちになっていたんです。僕は北海道で育ったんですが、北海道の海岸線のへりに立つと「あっちから戦闘機がやってきて自分が撃たれる」って感覚になってしまうほど。それくらい戦争のことは身近に感じ取れる幼少期だったんです。だからかもしれませんが、この脚本を読んだときは、小八重さんが演じる琴子を含め、今を生きる子どもたちが戦争を追体験することに、すごく重要な意味を読み取ってしまいました。そして、大人として自分が彼らをどのようにヘルプできるか、俳優としての手助けをできるのか、ということを思っていました。

 

――諸積がまさにそういう役回りですよね。

 

坂東 そうなんです。僕が小さいときよりも今のほうが戦争が身近になっているように感じますし、この社会にこの作品を届けることはすごくすごく意義のあることなので、自分にできることは全部やろうと奮起して。とはいえ、3カ月あった撮影期間のうち、たった7日しか僕はいなかったので、撮影当時に全貌はぜんぜん、分からなかったんですけどね。

 

西川 大人の俳優さんたちのパートは、皆さん撮影期間が短かったんですよね。とはいえ、坂東さんはそのなかでも多いほうですよ。田中裕子さんや役所広司さんは3〜4日でしたから。

――役所さんと田中さんは文鎮のようにめちゃくちゃドシッとした存在感の役ですけど、シーンはすごく短かったですものね。

 

西川 ほとんどが子どもたちのパートですからね。でも、大人の俳優さんがいらっしゃるときは、皆さん現場をよくサポートしてくださいました。島で子どもたちが悪巧みをしかける諸積のシーンも、撮影前にしっかりリハーサルやりましたよね。

 

坂東 監督が子どもたちに「ちょっと乗っかってみて」とか言うんですよ。それで肩車状態になるくらいまで乗っかって帽子やらメガネやらをひったくられて(笑)。でも、子どもの手足だからなかなか僕のからだにからめられないんですよね。「息できなくなるくらいに締め上げちゃって」ってお願いしてました(笑)。

 

西川 むしろ坂東さんがさりげなく自分で締め上げて、「痛い痛い!」って言ってましたよね(笑)。子どもたちの場面は身体的な動作が伴う芝居が多いのですが、当日初めてやるとなると、うまくいかなかった時に大人のようにすぐに修正は効かないから、どんどん時間が経っていっちゃう。だから大人の俳優さんはみんなリハーサルから来てくれて、こう動こう、ああ動こうと、提案してもらいながら準備してもらったんですよ。

 

――諸積って事件のほぼ全貌を傍観している役割だから、この作品のなかで一番観客に近い立ち位置の役だと思うんです。

 

西川 そうですね。劇中でも出てくるけど、戦中の人戦後の人っていう意味で言うと、戦後の人です。

 

坂東 たしかにそうですよね。

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Interview & Text_MASAMICHI YOSHIHIRO
Photograph_KAZUYUKI EBISAWA[MAKIURA OFFICE]
Styling_YASUKA LEE(坂東さん)

■坂東さん衣装クレジット
ジャケット¥69,300(kiivu)、中のトップス¥27,500(PIPPIOLINO)、パンツ¥38,500(saby)、シューズ¥85,800(OLDTOWSON)、その他スタイリスト私物

問い合わせ先

BLANDET▲Tokyo
miyamoto@miyamotospice.com

バーニーズ ニューヨーク
050-3615-3600

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03-6823-5074

OLDTOWSON
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WRITER

1972年、東京都新宿区生まれ。大学在学中からゲイ雑誌『バディ』編集部で勤め始める。卒業後、音楽誌、情報誌、女性誌などの編集部を経て独立。『sweet』、『otona MUSE』(共に宝島社)で編集・執筆のほか、『an・an』(マガジンハウス)、『家の光』(家の光)、『with』(講談社)、『J:COMマガジン』(J:COM)など多くの媒体で、インタビューやレビュー記事を連載。テレビ、ラジオ、ウェブなどでも映画紹介をするほか、イベントでの解説、MCも。ゴールデングローブ賞国際投票者、日本アカデミー賞会員、日本映画ペンクラブ会員。

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