「人さらいのように。無理やり仕事してもらいました」【西川美和監督・坂東龍汰さん】映画「わたしの知らない子どもたち」対談
――さて、とっといた話。坂東さんは北海道育ちですけど、お祖母様が広島というお話ですが。
西川 びっくり。北海道育ちって聞いてたから、広島に縁があったとは思ってませんでした。
坂東 祖父母が瀬戸内海にある島で育ったんです。だから子どもの頃は夏休みになると広島に。
――ヤバいですよ、この話。西川さんは今も半分広島が拠点ですし、じつはあたしも母方が広島で、隣りにいる編集担当は広島の小学校を卒業したという。
西川 ここにいる全員、広島にゆかりが……。ここ、東京ですよね(笑)?
――なかなかないですよね。しかも坂東さんくらいのお年の方でも、戦争体験を聞く機会は少ないでしょうし、ましてや体験者は家族につらいトラウマは話したがらない方が多いですし。
坂東 そうですよね。僕の祖母は伝えないといけない、っていう使命感をもって、寝る前に話してくれたんですよ。それで眠れなくなったんですけど(笑)。だからすごくリアルに覚えてるんです。
――そういう経験があったから、本編を観たときは他人事には観られなかった?
坂東 それはありますね。僕が体験したわけではないけど、祖母の話で想像していたことや、大人になってからみた戦争映画などでイメージはあったんですが、今回も試写で観て他人事じゃないな、と。
西川 奥行きはVFXで足してるんですが、焼け野原などはオープンセットなんですよ。人が芝居する場所はかなり大きな範囲で、美術部が頑張ってセットを組みました。
――2000年代に入ってからの戦争映画は、VFXなしでは絶対に撮れなくなりましたよね。
西川 数百年景色が変わらないヨーロッパと違って、古い町並みをそのまま撮影できる場所は関東近県にはほぼ皆無ですからね。逆にVFXがここまで進歩してくれたから、今はできると思えるんですよ。この作品を20年前に思いついてたら、諦めてます。
――イタリアの映画助成も活用されてますよね?
西川 イタリアの文化省から助成金が出て、それを使わせてもらおうという話にもなりかけたんだけど、ほぼ編集まで済んでからその話が出てきたので、その条件に合わせるにはイタリアのクリエイターの入る余地がなかったんです。でも、イタリアの文化省で映画制作での諸税優遇をしてくれるプログラムがあるので、せっかくだから音楽の録音をイタリアの制作チームと合作することにしました。あと、VFXは白組(『ゴジラ-1.0』でアカデミー賞特殊視覚効果賞を受賞したスタジオ)が主導しているんですが、イタリアのVFXチームに分業してもらっています。イタリアのVFXチームは日本のVFXを「日本はパースペクティブ(奥行き)の表現がすごく上手だよね」と言ってくれてたみたいですよ。

――坂東さん、これ、めちゃくちゃ大きなプロジェクトじゃないですか……。
坂東 自分が関わっていること、まだちょっと信じられない……(笑)。
――逆に大活躍中の坂東さんと巡り会えた西川監督もラッキー。
西川 いやほんと。タイミングよね(笑)。人さらいのように無理やりお仕事してもらって(笑)。
坂東 人さらい(笑)。
西川 今回の御縁は本当に感謝してます。坂東さんの事務所には私もこれまで仕事してきた方いらっしゃるけど、信頼できる俳優陣が多いので。
坂東 先輩方のおかげです。
――じゃ、やっぱり次の企画も坂東さんをオファー!
西川 と言いたいところなんですが、こればかりは企画次第かな。というのも、私が次の企画を実現するころには、坂東さんはもうありとあらゆることをやっちゃっていて、新しいチャレンジにならない可能性があるんですよ。すでになんでもできる人になっていると、私の攻め手がない(笑)。
坂東 あ、それなら僕、何もしないで待ちますよ。
――いやいや、たくさん仕事して……(笑)。
坂東 俳優じゃなくて……えっと、きこりとか。
西川 それもできそうで怖い。だって、主演でも助演でもなんでもできるもの。
――極悪なシリアルキラー役、とかは、まだですよね?
坂東 まだないですね。
西川 ぜんぜんいけそう……(笑)。坂東さんがやったら面白くなりそうな役を探すの、面白そうですね。

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この記事の画像一覧
Interview & Text_MASAMICHI YOSHIHIRO
Photograph_KAZUYUKI EBISAWA[MAKIURA OFFICE]
Styling_YASUKA LEE(坂東さん)
■坂東さん衣装クレジット
ジャケット¥69,300(kiivu)、中のトップス¥27,500(PIPPIOLINO)、パンツ¥38,500(saby)、シューズ¥85,800(OLDTOWSON)、その他スタイリスト私物
問い合わせ先
BLANDET▲Tokyo
miyamoto@miyamotospice.com
バーニーズ ニューヨーク
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WRITER
1972年、東京都新宿区生まれ。大学在学中からゲイ雑誌『バディ』編集部で勤め始める。卒業後、音楽誌、情報誌、女性誌などの編集部を経て独立。『sweet』、『otona MUSE』(共に宝島社)で編集・執筆のほか、『an・an』(マガジンハウス)、『家の光』(家の光)、『with』(講談社)、『J:COMマガジン』(J:COM)など多くの媒体で、インタビューやレビュー記事を連載。テレビ、ラジオ、ウェブなどでも映画紹介をするほか、イベントでの解説、MCも。ゴールデングローブ賞国際投票者、日本アカデミー賞会員、日本映画ペンクラブ会員。
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