「人さらいのように。無理やり仕事してもらいました」【西川美和監督・坂東龍汰さん】映画「わたしの知らない子どもたち」対談
西川 当時の新聞記者の方が、諸積のように街にいる孤児に声をかけて彼らの暮らしぶりに密着したり、児童収容施設に取材に行き、それをルポに仕上げていたりもしました。中には、孤児たちと何年も関係があって、雑誌で孤児の座談会を組んだりした人もいました。それがすごく興味深かったんですよね。そんなふうに彼らが生の声を取材して文字に残してくれたことがとても役に立ちました。誰かが書き残してくれたおかげで、後の世の人が何かの材料にすることもある。だから彼らのような「記者」を出したいと思ったんです。しかも、戦前戦中の記者は国威高揚のための記事を書いていたのに、敗戦してすぐに手のひら返して民主主義だ、って言葉をひるがえした人たちでしょ。その変わり身も、私にはわからないでもないんですよ。私の映画にはよく軽薄なメディアが出てくるんですけど、それは「取材者の原罪」のようなものの自覚が私にもあるからなんでしょうね。でも、彼らがいることで少なからず伝わるものがあるなら、という希望も込めているのが、諸積。
坂東 僕はメディア側って意識、あまり持ったことがないから新鮮でした。じつは僕、メディアを遮断されて育ったんですよ。18歳くらいまでテレビもラジオもほとんど視聴してなくて、携帯も持ってなかったんです。社会に出て初めて、情報の海に放り出された感覚があるんで、まだ追いついていないんですよ。18年のラグは大きい。それがハンデになることもあるんですが、より貪欲に情報を得ようとする気持ちにつながっている気がします。映画をひたすら観まくるのもそうなんですが、人よりも多めに早めにやろうとしているんですよね。
――うわ、ジレンマ……。しかも今回の相手は子ども。よく言うじゃないんですか。子どもと動物の芝居は読めない、って。是枝監督はそれをお得意分野にされてますけど、西川さんもお得意では?
西川 ぜんぜん。全く得意じゃないです。どちらかというと苦手。
――あ、はっきり言っちゃった。同じく子役の猛獣づかいをされた『永い言い訳』のときもおっしゃってましたよね。
坂東 あ、そうだったんですね(笑)。
西川 だって、大人とは合意の取り方がぜんぜん違うじゃないですか。もちろん子どもたちも、役を演じたくて来ているけど、かれらが「できます」って言ってても、プロの大人の俳優が言う「できます」とは経験則が違う。かれらの想像を超えたことも現場にはあるし、たくさんのハードルを超えてもらわなくちゃならない。大人の思惑にうまく子どもを乗せながら、だましだましやらせてる感じがあって、どこまで行っても罪悪感がつきまとって苦しいんですよ。

――でも、子ども主役の脚本を書いちゃいましたものね……。
西川 子どもしか出てこない脚本を(笑)。
坂東 たしか読み合わせのときからおっしゃってましたよね、「大変になることが分かっているから」って。
西川 でも、子どもたちが「何をさせられているのか理解できない」という状態で演じてほしくなかったんですよ。子役ひとりひとりが設定を分かってもらうよう、勉強してもらいました。

Interview & Text_MASAMICHI YOSHIHIRO
Photograph_KAZUYUKI EBISAWA[MAKIURA OFFICE]
Styling_YASUKA LEE(坂東さん)
■坂東さん衣装クレジット
ジャケット¥69,300(kiivu)、中のトップス¥27,500(PIPPIOLINO)、パンツ¥38,500(saby)、シューズ¥85,800(OLDTOWSON)、その他スタイリスト私物
問い合わせ先
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WRITER
1972年、東京都新宿区生まれ。大学在学中からゲイ雑誌『バディ』編集部で勤め始める。卒業後、音楽誌、情報誌、女性誌などの編集部を経て独立。『sweet』、『otona MUSE』(共に宝島社)で編集・執筆のほか、『an・an』(マガジンハウス)、『家の光』(家の光)、『with』(講談社)、『J:COMマガジン』(J:COM)など多くの媒体で、インタビューやレビュー記事を連載。テレビ、ラジオ、ウェブなどでも映画紹介をするほか、イベントでの解説、MCも。ゴールデングローブ賞国際投票者、日本アカデミー賞会員、日本映画ペンクラブ会員。
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